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1.(1)〜(4):「紹介」 2.(5)〜(11):「溜息」
3.(12)〜(17):「孤独」 4.(18)〜(19):「圭子」 5.(20)〜(23):「照實」
6.(24)〜(31):「作品」
連載:ワシントン・ポスト/2004 Part V
引用元 URL → http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A31175-2004Oct13.html

           → http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A31175-2004Oct13_2.html


元々の文章が結構長いので、読み易いようにと僕が勝手に6つのパートに区切ってみました。
即ち、元々はこういう区切り方をされていない、ということにご注意ください。
あくまで、翻訳者による区切りです。 見易いように各段落に番号を振り、区切りごとに色を変えてみました。
逆効果になっていないことを祈ります。

Part V
3.(12)〜(17):「溜息」


少女時代をあとにして大人への“脱出”を図った日本のポップスター

ショーン・ダリィ
ワシントンポスト・スタッフ・ライター

投稿者:i_投稿日:4/21(木) 23:13

(12)「私の新しい音楽には、12歳の女の子たちが引っ掛かるようなものは、ないと思う。」とウタダは言う。「私のリスナーは、それよりもっと年齢が上かな、って。」

(13) エリック・ウォン(アイランド/デフジャムのマーケティング・シニア・ディレクター)は、彼女の「神秘的とすらいえる、ポップ・ミュージックを作り上げる手腕」と「他に類を見ないオルタナティヴとポップとダンスとファンク・グルーヴのブレンド」について誇らしげに語るが、その「神秘的」とか「他に類を見ない」といった言い回しは、今日(こんにち)のティーン・ポップ・マーケットへの売り文句としては、(控えめに言っても)ベストとはいえないだろう。ウタダは、来年(2005年)小さなU.S.ツアーをするプランもありえる、と言っているが、2004年の残りは、比較的スケジュールが空いているらしい。

(14)ウタダは、そのジャンルを飛び越える音楽の殆どを「小さな自分の部屋にひとりで座って、マイクを片手に、マウスをもう一方の手に」しながら、コンピューター上で創っている。彼女は、ここアメリカと海外(註:恐らく日本のこと。アメリカから見たら海外。)で、親密な友人とのネットワークをもっているとはいえ―― そして、最近ロサンゼルスで時間を過ごしているという夫のキリヤがいるとはいえ――、彼女は、ひとりっきりで居るのを好む。

(15)「一人で散歩をするのが好き!」とウタダは言う。最近はマンハッタンに住んでいるらしい。「昨日の晩はすごい雨でさ、今まで私がニューヨークで見た中でも一番キツい降り方だったんじゃないかな。カサ持って家に向かって歩いてたんだけど、風もまたキツくって。だからカサを閉じちゃって、もうずぶぬれ。(笑) 雨の中をひとりで歩くのは、楽しかった!(笑)」

(16)彼女は、自身を孤独な性格なのだという―― つまり、人生のあれやこれやを乗り越えて成長していく彼女なりのやり方が“常に独力で”、ということなのだろうが――それは、非常に多忙な両親を持つ一人っ子であったことに起因するらしい。

(17)「それはまるで、一匹のネコが沢山の人間たちに囲まれて育つようなもの。そのネコは自分のことを人間だと思い始めるでしょ?」そう彼女は話す。「だから、大人の家族の中でたった一人子供で居る、っていうのも、同じ状況だったわけ。わかるでしょ? 5歳の頃も今も、感じ方はそんなに違わないんだ―― 私の世界の眺め方も、それに対する反応の仕方も。」

訳者後記:i_

まず、訳者がもたもたもたもたしていたため、初出から半年たっての訳出になってしまったことをお詫び致します。m(_ _)m この記事を読みたくても読めなかった方々には、申し訳ないことをしました。まだ読んでくれていたら、いいのですけどね。後悔頻りです。
 さて、それだけ遅れたのだから、翻訳作業だけでなく、極一部で期待されているという(笑)、訳者後記を、いつにも増して充実したもの(かどうかの判断は読んだ人のすることですけどね(笑))にしてみました。殆どの人には単なるお目汚しでしょうが、いいんです、期待してくれてるほんの少数の人たちが読んでいてくれるのなら。とはいえ、いつにもまして長いので(汗)、連載投稿することにしました。

今回は、「翻訳についての後記」と「内容についての後記」を分けました。ところどころどっちつかずな文章も含まれてるかと思いますが、厳密に分けたわけではなく、なんとな〜く分けただけなので、そのつもりでお読みいただければ幸いです。では、どうぞ。

*****


翻訳について:

各段落毎にいろいろと細かいことから大雑把なことまで指摘していきましょう。僕の誤訳への指摘の助けになるように、また、中高生の皆さんの英語の勉強にマイナスにならないように、書いたつもりです。書いてないことは意図していない、と考えて下すって差し支えないように、微に入り細を穿つ文章になっていますので、多少(か?(汗))くどいのもまた、ご容赦くださいませ。m(_ _)m

一段落ずつ虱潰しにいきます.
(12)

I don't think 12-year-old girls are going to hitch to my new music, says
Utada. I think my audience is much older than that.

(12)〜(13)の解説文

@ 「シニア・ディレクター」の日本語訳は、「専務理事」なんだそうな。

A uniqueは「独自の、個性的な」ということですが、ちょっと宣伝文句っぽい「他に類を見ない」に変えてみました。意味、通じるよね?(笑)  

★ 「控えめに言ってもベストとはいえない」というのは常套文句のように思ってるので(笑)括弧書きを加えちゃいました。(こうして見ると、結構奔放に訳してるな自分・・・)
(13)

Eric Wong, Island/Def Jam's
@ senior director of marketing, boasts of Utada's
enigmatic pop skills and
A unique blend of alternative, pop, dance and
funk grooves, but enigmatic and unique aren't exactly the best
buzzwords when you're selling to today's teen-pop market. Utada says there
are possible plans for a small U.S. tour next year, but the rest of 2004 is
relatively empty.
(14)

Utada creates much of her genre-hopping music on a computer, sitting in my
tiny room alone with a microphone and a mouse in my hand. Although she has
a close network of friends here and abroad -- and she has hubby Kiriya,
who's been spending a lot of time in Los Angeles lately -- she prefers to
be by herself.
(13)〜(17)までの解説文

@ credit〜to ・・・は、・・・であることが、〜に由来する、という使い方です。あんまり見ない・・・こともないか。(笑) 

A processは「処理する」という意味ですが「乗り越える」としておきました。

B twisteroosはtwist+eroosで、「曲がりくねったもの」+「滑稽さを表す語尾」ということらしいです。life's twisteroosで、「人生の浮き沈み/畝・峠/紆余曲折」といったところでしょうか。

C equalは、「対等」という意味でしょうか。子供なのに大人の対等な関係にある、と彼女は感じていた、ということかと思われます。

D I don't feel that different from ...は、「...とそんなに違わないと感じてた。」という訳になりますか。英語ではnotの位置が必ず前倒しになるので、ここを「...とかなり違うとは感じてない。」にすると若干不自然かな。そうでもないかな。

(15)

I love walking around alone, says Utada, who's currently living in
Manhattan. Last night there was a terrible rain. It was one of the hardest
rains I'd seen in New York. I was walking home with an umbrella, but it was
windy, too. So I closed my umbrella and got wet. It was kind of fun,
walking in the rain alone.
(16)

She
@ credits her solitary nature -- and her rather grown-up way of
A processing life's B twisteroos -- @ to being an only child with very busy
parents.
(17)

It's like when a cat grows up with a bunch of people, the cat starts to
think it's human, she says. So as only child in a family of adults, you
think you're an
C equal. D I don't feel that different from when I was 5 years
old -- the way I see the world and react to it.
内容について:

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3.(12)〜(17):「孤独」

 第12段落、「12歳の女の子」が出てきますが、これは今のアメリカ市場で売れるアーティストが、必ずローティーンから支持を受けている、という背景がある場合に使われる・・・はずです。現況を把握してない訳者はそれについてはわかりません。英語では、eleven,twelve,thirteen,...,nineteenと、12歳までの年齢と、13歳〜19歳までの年齢を違う世代として扱いますね。「ティーン・エイジャー」というと、10歳〜19歳ではなく、語尾にteenとつく13歳〜19歳を指す・・・という訳者の認識です。つまり、ここで触れているのは、実は聴き手の年齢がどうの、ということではなくて、むしろ「今のアメリカ市場にあってないかもしれない」ということを言いたかったのではないでしょうか。ですので、これを読んでる12歳以下の皆さん、もし「エキソドス」を気に入っていたとしても、気にしないで下さい。(笑) てか、それは素晴らしいことですよ。(*^_^*)

 で、そのことが第13段落で触れられているわけです。teen pop market/ティーン・ポップ・マーケットというのが、『10代向けポップスの市場』なのか、『10代が主導権を握っている現在のポップス市場』なのか、ちょっとわからないですが、どちらでも余り差はないでしょうかね。「エキソドス」の“エニグマティック&ユニーク”なサウンドは、全く今の米国市場では売れ線ではない、ということを言っていますね。エリック(・ウォン。彼の名前は「エキソドス」のブックレットの最後のリスト、上から7行目にありますね。< thanx to urumin. !)はもちろん、最大級の賛辞としてこの形容を使っているわけですが、皮肉にもそれが裏返しに取られてしまう、というこの状況、『今UtaDAは歯痒い状況に居る』という描写をしたがっている記者の方の意向が汲み取れますね。ツアーについては、恐らく、2004年暮れ辺りから少しずつUtaDA側としてはブッキングしていきたかったんでしょうけど、初っ端のショウケースからして2月下旬に(恐らく半年ほど)ずれこんだわけですから、ここでスケジュールが空いてしまうのは仕方なかったんでしょうね。(その分、確りとしたメンバーと確りとしたリハーサルが出来た・・・はずです(笑)。)

 第14段落、キリヤさんが「最近ロサンゼルスで過ごしている」のは2004年9月〜10月の時点の話ですお間違いなく。(<と自分に言い聞かせる遅筆な訳者(汗)) 

 第15段落、豪雨の中のお散歩という話ですが、果たしてそのとき鼻歌を歌っているのかどうか?(笑・・・singing in the rainという有名な歌があったりします。映画の歌。) 差そうとしてた傘は青色なのか否か?(笑) ・・・でも、こういう異様なシチュエーションのときに作曲のネタが思いついたりするから侮れませんぞ。(謎) でも、楽しそうでいいですね。(*^^*) 日本じゃこんなことしてたら「宇多田ヒカルが危ないことになってる!」って驚かれそう。(苦笑) でも、これも僕よくわかりますね〜。僕も雨の中歩くの好きですから。(帰ってきた後の洗濯の憂鬱は別にして(笑)) 注射にしろ雨散歩にしろ、ちょっと自虐的なシュミと思われそうですけど、なんの!(←妙な気合) そういうことじゃ、ありませんよ〜。いずれも、ちょっと“違った”感覚が味わえるのが、いいのです。(^_^ゞ

 第16段落・第17段落にきてキーワードである「孤独」の話が出てきます。ひとりっこであったとともに、ご両親が彼女を最初からひとりの独立した人物であるという扱い方をしてきたことも、彼女の育ち方の一因ではないかと個人的には思っていますが、彼女からするとそれは「ほっとかれた」感覚に近かったのかなぁ。ネコの例えはわかりやすいですね。(逆に人間が狼の中で育つと自分が狼だと思い始める、ということもいえるわけですが) 冒頭で忠一の話を出してきたのも、このセリフへの伏線なのかな、とまで考えるのは穿ち過ぎでしょうね。(笑) さて――これもいつも触れていることですが――彼女にとって「5歳の頃」というのは、宇多田ヒカルの原風景を表現するたびにいつも使われてきてるように思うんですね。なぜだか、彼女がGet Wildを聴いているときの風景が、幼稚園の頃なんだか不機嫌になっているときの風景が(あ、こっちは4歳だった(汗))、僕には妙にリアルに感じられる。どういうものの見方をしていたかというと・・・猜疑的というのとも、紗に構えている、というのもとも、ちょっとずつ似ているんだけど本質的なところでは違っていて・・・5歳にして老成しているんだけど物事は新鮮に写っている、という・・・曰く言い難い(←表現に窮した時に使う表現(苦笑))感じです。で、それが今回本人に触れてもらえたのは、ちょと嬉しい。“その時点”から、ひかるはあんまり変わってないのでしょうね〜・・・本人の心積もりとしては。周りから見たら、激変に次ぐ激変の20年弱、になるのが、面白いところなんですけどー。


+++ 全体を通して +++
 
 今まで訳してきた新聞雑誌記事の中で、内容が一番網羅的な記事でした。つまり、もし数年後に、「当時UtaDAはアメリカでどんな取り上げられ方をしていたのだ?」という疑問が湧いた時に何かひとつティピカルな例として挙げて説明するなら、このワシントン・ポスト紙を差し出すのが、よい方法のひとつとなるでしょうね。ルックスと音楽性のギャップ、日本での神話レベルの知名度、音楽の好み、音楽一家の家族構成、米国市場に対する悩み、ティンバランドとのコラボ、…元々の取材ソースが同一なのか、それともアーティスト側が質問と回答を固定しているのか、他で見られた文章と非常に類似したものも散見されていますが、この記事を「総集編」的位置付けで捉えるなら、それは非常に有益・効率的な事実だと思います。全体的に言い回しがくどいのは、翻訳が至らない所為もあるとはいえ、かなりの割合で原文が実際にクドクドしている、ということです。字数に余裕があるんでしょうかはたまた逆に字数が足りないから婉曲的な表現を多用して読者の解釈能力に委ねているんでしょうかちょっと量りかねましたが、何れにせよわかりにくいことには変わりない。(汗) もっと素直に文章を綴ってくれてもいいのに、と度々思いました。伝えたいことが精微だから言い方も精微になってる、ということでしたら、そこまで汲み取り切れなかった訳者の責任になっちゃうんですけどね。(^_^ゞ 
 そして、インタビューの内容が、他の記事に比べて一番踏み込んだものになっていそうな気がします。注射がどうのとか、雨の日に歩いてたことだとか、かなりリラックスした状態でないと訊き出せないようなことを…インタビューアの手腕がよいのでしょうか、それとも、他では字数の都合上取り上げ切れなかったような会話が、ここでは取り上げることが出来たというだけでしょうか。いずれにせよナマの声がきけて嬉しいインタビューになっていますね。これを読んで引いちゃう人が多発しないことを祈りたいですが。(笑) 僕自身はまたしても親近感が増して(逆かな〜。彼女に近づきたい一心が程度を越し始めているだけなのかも(汗))、ますます嬉しくなってるんですけどー。あとはもずくが好きな理由を知りたい。(謎含笑)<記事とカンケーないよソレ(^∇^;


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最後に一つ、重要なつけたしがっ!
「その1」で『最初のリンクが最早既に遥か彼方みたい』と書きましたが、大嘘でした!ごめんなさい、ちゃんと元記事はWEBで参照できます。↓
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A31175-2004Oct13.html
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/articles/A31175-2004Oct13_2.html
わらがい父ちゃんとこに張ってあるのを発見致しました。thanx to 宇多田合衆国大統領!(笑))
(で、記事の日付はURLを見ると2004/10/13、文章内では10/14ということみたいです。どっちなんでしょう。わかりません。)

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Part W 4.(18)〜(19) 「圭子」